今回で6回目となるKDP(キンドルダイレクトパブリッシング)実録。
いよいよ最終回である。なぜなら、無事に電子書籍を販売スタートすることができたから!
紙の本1,296円に対して、500円(税込)とお求めやすい価格にしました。
Kindle版 『流しの仕事術』
http://www.amazon.co.jp/dp/B01C7IGR7M

いやぁ、長かったような、短かったような・・・。
いろいろな仕事をしながら、調べながらだったが、最初の「KDP実録」のブログを書いてから約2週間で販売することができた。
今回の最大のポイントは、「全て自分でやること」だった。
僕は2012年8月に前職の版元を「電子書籍の会社を起業したい」と言って辞めた。
その言葉に嘘偽りはなかったが、なかなか世間の大きなうねりと波長が合わず、起業当初はそれまで培ってきた経験と知識を活かし、紙の本を出すことにした。
そのときの様子は2013年10月のこのブログにも書いてある。
会社を辞めてから約3年半、ようやく夢の一歩を踏み出すことができた。
今回は、「なぜ、当初の目標だった電子書籍を出すのに3年半もかかったのか?」ということを書きたい。
これ、僕にとってはとても大事なことだからだ。
正直に書けば、これまでの3年半、電子書籍を出すツテが全くなかったわけではない。
電子書籍界の大手会社と編集者契約を結んだり、ライターの取材で知り合いになった、これまた大手の方に電子書籍の情報を提供してもらったりと、さまざまなことがあった。
――僕はとっても悩んだ。出すべき、待つべきか。
結局、そこで出さなかったのには大きな理由がある。
“手軽さ”が売りの電子書籍も紙の本と同じように中間にいろいろ挟まなければ出せないのであれば、これまでやってきた仕事(紙の本)と全く変わらないと思ったからだ。
紙の本をつくるのって本当に大変である。
著者からようやくもらった原稿をデザイナー(組版)にゲラにしてもらい、何度も校正のやり取りを編集者と著者がして、最終データを印刷所に入れて(この間に紙屋に紙を別途注文することもある)、刷り上がったものは本の形にする製本所に入り、そして、やっとのことで全国書店への流通をしてくれる取次を経由して、書店に入る。
本をつくって読者に届ける最低限の過程だけで、著者と編集者以外に、①デザイナー(組版)、②印刷所、③紙屋、④製本所、⑤取次、⑥書店と、6つの中間業者が間に入っているのだ。
「紙の本の値段が高い」とお嘆きの方は、これを読めばその理由がおわかりいただけると思う。出版界の勝手な事情だが、これらの全員がメシを食っていかなければならないと考えると、1,500円とか安過ぎるとさえ思えてくる(この認識に世間と大きなズレがあるのは重々承知している)。
1冊の本をつくり届けるために、著者と編集者を含めれば、8者が入り乱れ、咲き乱れ、さらに校閲担当、カバーデザイナー、書店営業、広告担当、倉庫業者などもそこにくんずほぐれつで絡み合い、ようやく本は売れていくのである。
出版界がドM気質なのは、これだけの過程を踏んで出版した本が売れるかわからないというギャンブル要素をたぶんに含んでいる点にある。
僕は前職が10人未満の小さな会社だったこともあり、編集職をメインにやりつつ、営業や倉庫整理など、出版にまつわるさまざまな業務に携わらせてもらった。この経験こそ、僕の宝である。
大手出版社の人は倉庫整理の辛さ、ギックリ腰になるほどの本の重さ(僕も一度経験あり)、自分でつくった本が売れずに自らの手で破いて処分する辛さはなかなかわからないのではないだろうか。
だから、僕は「電子書籍をやりたい」と思った。
辛いから逃げたいのではなく、「情報がネットに溢れ、モノの価格が下落している現代に紙の本のコストと時間が合わなくなってきている」と肌身をもって痛感したからである。
そんな感覚を持ちながら日々働いていると、「そもそも本ってなんだろう?」ということを考えはじめる。
僕は本の本質は「文と絵」、それだけにあると思うようになった。
つまり、中間の6者を除いても、著者と編集者が「良い本を出そう!」と思ったら出せる状態が出版の原点であり、本質であり、あるべき姿ではないかと思ったのだ。
それを実現できる電子書籍を想像すると、メリットがたくさんあることに気づく。
「在庫を抱えない」「コストがかからない」「著者と編集者の2人で、つくりたい本をシンプルにつくることができる」。
僕はこの形をつくりたかった。だから、たとえ電子書籍の大手企業であっても、中間にさまざまな業者を入れて出すのは違うという思いがずっとあった。
もっと言えば、電子書籍が最終形だとも思っていない。もっとこれらにマッチしたものが今後生まれる可能性は十分にある。
そのなかで、今回はKDP(キンドルダイレクトパブリッシング)を利用した。
KDP
https://kdp.amazon.co.jp/
これは簡単に言えば、著者がAmazonに自分の電子書籍(Kindle)をダイレクトに出して、売ることができるサービスである。
うちは今回、版元としてKDPを利用したが、売れる本を自分で書ける著者であれば(売れなくても別にいい。コストがかからないから)、版元すら挟まずに使えるサービスなのだ。
KDPのよいところは、「自分で全て完結できる」ことである。
この「KDP実録」を最初から読んでいただいている稀有中の稀有の方は、僕が1人で全て「あーでもない、こーでもない」と言いながらやってきたことを知っていただいていると思う。
苦戦の日々だったが、やってできないことはないのだ。現代の僕らにはGoogle先生という強い味方がいる(だから、紙の本が売れないというパラドックスが人生の複雑さを表しているようだ)。
「紙の本のデータがあったからできたんでしょ?」と思う人がいるかもしれないが、ハッキリと断言するが、紙の本のデータがないほうが早かった(原稿があればだが)。
なぜなら、Wordで書いた原稿をそのままKindleにすることができるからである(その理由はこのブログで書いた通り、電子書籍はデザイン性が低いから)。
KDPは以前からあったが、僕の中ではまだまだ不安定なイメージがあった。
が、ようやく安定してきたと判断したから僕は飛び付いた(KDPで出された本がAmazon1位になったのだ)。この判断は正しかったと思っている。
と、ここまで電子書籍のメリットを書いたが、僕は紙の本の素晴らしさ、それにまつわる職人たちの仕事ぶりに尊敬の念を抱いている。
僕も紙側の端っこにいる人間の1人だが、最近、Web媒体でもよく仕事をするようになり、明らかに違う人種と感じることが多々あるのだ。
その点は、また別の機会に。長文失礼しました。
こちらもぜひ見てみてください!
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