大事に少しずつ読んでいる『職業としての小説家』。

読み終わってもきっと何度もずっと読み続ける本になると思う。

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まだ読書の途中(p.200ぐらい)だが、今の段階での感想を書いておく。自分が忘れないように。

これは「書評」などという偉そうなものではなく、あくまで「感想文」である。


僕が一番驚いたところはここだ。

僕はそれがどれほど長い小説であれ、複雑な構成を持つ小説であれ、最初にプランを立てることなく、展開も結末もわからないまま、いきあたりばったり、思いつくままどんどん即興的に物語を進めていきます。/『職業としての小説家』 p.143 より抜粋



ぶったまげましたね。

僕は小説を書いたことがないし、書きたいと思ったこともないので全くわからないのだが、一般的に小説家というのはこういう書き方をするものなのだろうか?

短編なら、まだ素人ながらに「そういうものなのかもな」と想像ができる。

でも、村上春樹さんの長編小説は章ごとに主観が変わるような大変複雑な入り組み方をしていて、ご本人の言葉を借りれば「複雑で重厚な」構成の物語だ。

読んでいるこっちですらときどき混乱してしまうことがある(それは僕の理解力に問題があるのかもしれないが)。

村上春樹さんは、数学で言えば「帰納法」のように結論から逆算して物語を組み立てているのかと僕は勝手に思っていた。『海辺のカフカ』なんて、複雑なロジックツリーのようなものをつくらなければ絶対に書けるはずがない、と。


事前にプロットを組み立てることもなく複雑な構成の小説を人は書けるものなのか?

たとえば、学生時代に小論文を書くとき。たとえば、難解な数学の証明問題を解くとき。

いきなり何も考えずに書きはじめる、解きはじめる人はいないのではないだろうか。

もちろん、小説というクリエイティブなものとは別なのかもしれないが、「それにしても・・・」と思ってしまう。


たとえば、僕の話(文を書く末端の人間として)。

普段、僕はビジネス系のカッチリした堅めの文章を主戦場にしているが、書く前にレベルの差はあれ、構成をだいたい考える。

その理由は至極明確で、

迷子になりたくないから

である。


書き進めたものの、「あれ、これ何書いてるんだっけ?」「どこに終着するんだっけ?」となると、とんでもなく厄介なことになることがわかっているから構成を組み立てる。


はっきり言って、村上春樹さんは異国の人、宇宙人なのだが、あえて村上春樹さんがいきなり書き始めるスタイルを実現できる理由について、読書途中ではあるが、現状の情報で僕なりに分析してみた。

それは以下の4つである。

①時間の制約がない
②書き直しにとてつもない時間と労力をかけている
③心躍るクリエイティブなものだから 
④元も子もないが圧倒的な「才能」


それぞれについて掘り下げてみる。


①時間の制約がない
村上春樹さんは出版社からいついつまでにと〆切を設けられる形ではなく、自分が書きたいときに書くという恐らく稀有なスタイルの人である。それが可能なのは、言うまでもなく本がめちゃくちゃ売れているのと、翻訳の仕事もされていて、生活に大変な余裕があるからだが、要は「時間がたくさんあるから迷ってもいい」という前提で書きはじめられている(と思う)。

②書き直しにとてつもない時間と労力をかけている
で、迷ったらどうするかというと、村上春樹さんはとんでもないレベルで、時間と労力をかけて書き直しをされているそうだ(気になる方はぜひ本を読んでみよう)。以前、水野敬也さんが何かで「原稿をたくさんの人に見せて、指摘された箇所は全て、どんなものであれ修正する」と書いていたが、修正にとてつもない労力をかける点はお二人の共通点だと思った(ちなみに村上春樹さんは最初に奥さんに読ませるらしい。微笑ましい話だ)。

③心躍るクリエイティブなものだから 
村上春樹さんは本当に小学生がマンガや物語を想像して書くように、ワクワクしながら小説を書かれているようだ。ブログの冒頭で本から一部引用したが、その後には「その方が書いていて断然面白いからです」と続く。なんでしょうね、このピュアな声は・・・。「だって面白いから僕こうする」と答えて許されるのは村上春樹さんぐらいではないでしょうか。

④元も子もないが圧倒的な「才能」
「時間の制約なしで、心躍るものをそのまま書いていいよ!」と言われても、僕は何も書けないし、大半の人はそうであろうと思います。あくまで①~③は村上春樹さんVer.の条件であって、一般論ではないでしょう。むしろ、「何でも書いていいよ」「何してもいいよ」と言われるのが最も途方に暮れるパターンだったりします。


以上、また読み進めたら書きます。

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